ゲームかと思いきや、、
こちらの続きでアーネスト・クラインの『アルマダ(下)』です。
ディープなネタで読者の”ツボ”を鷲掴みにしつつ、主人公を取り巻く環境は急転直下の超緊急事態へ。
家族・友人・恋の行方とそれぞれの結末はいかに。ラストまで一直線!
こんな人におススメ
- ゲーム好きな方
- ギークネタが好きな方
- メカアクション系が好きな方
評価
チープ感は相変わらずで、主人公に都合のよい展開でグイグイ進みます。
文章自体は平易なので読み易さは高め。中~後半でちょっと冗長さが目立ってテンポは少しダウン。
ボリュームに関してもテンポとの絡みで若干のマイナス。もう少しブラッシュアップして、多少長めでも一冊で出してくれた方が読む側としては嬉しかったかな。
主人公の行動・視点・会話などいまひとつ共感ポイントが少なくて、没入度も低め。
上巻同様ギークなネタが好きな人にはおススメですがネタが分からないと辛いです。
※上巻だけ読む人も少ないとは思いますが、、、
『アルマダ(下)』|基本情報
基本情報
作品名(原題) | アルマダ(下) (Armada) | |
---|---|---|
著者 | アーネスト・クライン(Ernest Cline) | |
刊行年[新訳版](米国) | 2018年3月(2018年) | |
ページ数 | 320 ページ | |
出版社 | ハヤカワ文庫SF | |
ジャンル | SF |
どんな話?
世界規模で展開されるオンラインゲーム<<アルマダ>>は地球防衛同盟軍(EDA)が開発した精巧な訓練用シミュレータだった。
そのゲームの中で世界ランク6位のザックは、木星の衛星エウロパからの異星人による地球侵攻に際し、他の多くの高スキルプレイヤーと同じく、戦闘用無人ドローンのパイロットとしてEDAに徴集される。
互いにコールネームしか知らなかった上位ランカーと共に月の裏側にある秘密基地へと配属され、侵攻中のエウロパ星人たちの迎撃任務に就く。
かつて父親が残した古いコンピュータゲームや、SF映画のビデオテープ、ノートに記されたSF関連の年表は今回の出来事にかかわる重大な事実を示唆していた。
エウロパ星人の侵攻目的や父親の遺品にまつわる謎が明かされる。
『アルマダ(下)』|推しどころ
ディープな世界観は相変わらず
上巻に引き続き、ネタは随所に散りばめられています。もうこの人のライフワークなんでしょう。
「スターウォーズ」が苦手な人には苦行に近いかもしれません。
ただ、上巻で飛ばし過ぎたのか、若しくは後半のシリアスな雰囲気を保つためか、若干の失速感あり。
どうせなら最後まで全開ネタ爆弾満載で逝ってほしかったです。
ミラクルのオンパレード!
いやはや、徹頭徹尾主人公に都合のいい風が吹きまくってます。
上巻のインプレで、チープさがウリだと述べましたが、ここまで来るともはや神(ゴッド)の域です。
まぁやりたい事は分かるし、読んでる途中でオチも大体分かってしまうんですけど、これだけ頁を割いたのならもう少しどんでん返しがあってもよかったかなぁと思ってしまいます。
ただ、着眼点は悪くないですし、単純明快なストーリーは新規のSFファン獲得には効果ありだと思います。
あと、映像化されたなら是非観てみたいです。
「大将」が気になる。。。
主人公は入隊した時点から”中尉”ということになっています。
実際の軍隊でいきなり中尉扱いされる新兵はいないでしょうけど、世界6位の実力者なのと事態が事態だけに特殊な状況下での人事なのでしょう(ちなみにほかの徴集プレイヤーもみな中尉)。
で、既存の隊員には当然その他の階級の人も居る訳で、軍事ものでは馴染みの深い”軍曹”や、EDAを統括する”元帥”だったり、直接の上官になる”少佐”なども出てきます。
そんな中、ある重要な登場人物の階級が”大将”(軍隊に於いてはかなり上位の階級です)ってことになってるんですが、会話の度に「大将は~~ですか?」とか「~~です、大将!」とか呼ばれていて、出てくるたび「寿司屋かっ!」って思っちゃうんですよね。
一度気になるとずっとそれが引っかかっちゃって、、、
まとめ
小説の中だけのお話ではないかも
ドローンを使った戦闘自体は現代社会に於いても既に実際に行われていて、決して目新しいものではありません。
シミュレータとしてのオンラインゲームの在り方だったり、過去から現在に至るまでのゲーム開発のプロセスそのものが軍事利用の延長にあるものとした見せ方はなかなか練られていて興味深いです。
でもまぁインターネットももともと軍事用途から発展した技術ですし、そもそも人類と科学技術の発展は「戦争」と「エロ」という究極の欲求の上に成り立ってますから、あながち間違った筋書きでもないって事ですね。
コメント