『ボッコちゃん』|星新一の魅力が詰まった一冊!
今回のレビューは星新一の『ボッコちゃん』です。
ショートショートというジャンルを確立した星新一の代表作ともいえる本作。
タイトル作の「ボッコちゃん」をはじめ、「生活維持省」「最後の地球人」などシニカルで風刺の効いた作品から「殺し屋ですのよ」「暑さ」「闇の眼」などちょっと怖めなストーリーまで、この一冊で色んな味が楽しめます。
個人的には「親善キッス」や「デラックスな金庫」などオチが分かっても単純に面白い内容が好きだったりします。
こんな人におすすめ
- 星新一の作品を初めて読む・読んでみたいと思っている人
- SFが好きな人
- 謎解きやミステリ作品が好きな人
- 忙しくてまとまった読書時間がとれない人
ショートショートというだけあって一篇の長さは5~10ページほど。
5分程度で読めるので、通勤時の電車待ちや寝る前のちょっとした時間にサラッと読み終えます。
本書では50本のユーモアあふれるショートストーリーが楽しめ、お得感いっぱいです。
評価
100点満換算の78点。
『ボッコちゃん』|基本情報
作品名(原題) | ボッコちゃん | |
---|---|---|
著者 | 星 新一 | |
刊行年 | 1971年05月 | |
ページ数 | 352 ページ | |
出版社 | 新潮文庫 | |
ジャンル | SF |
あらすじ
バーのマスターが趣味で作った、美しいロボット「ボッコちゃん」。見た目は人間そっくりだが、できるのは簡単なうけ答えと、酒を飲む動作だけ———。
「ボッコちゃん」より
主要登場人物
基本的に固有名詞をもつ登場人物というのは星さんの作品ではほとんどありません。
代わりにN氏やS氏など、どこかの誰かと置き換え可能な人物として描かれています。
『ボッコちゃん』|推しどころ
タイトル作の「ボッコちゃん」とお気に入りの3本についてレビューしながら推しどころを解説します。
「ボッコちゃん」
まずはこの本のタイトルとなっている「ボッコちゃん」。興味を引く不思議なネーミングですよね。
あらすじにもあるように、とあるバーのマスターが趣味で作ったというのもポイントです。
趣味で作ったという点だけでもすごいのですが、美人なうえに簡単なうけ答えが出来てお酒が飲める。
しかも本物の人間と区別がつなないほどよくできている。
とくれば、バーに来る男客にうけがよさそうというのはイメージできます。
つれない態度のボッコちゃんなのですが、そこがまた逆に男を惹きつけるチャームポイント。その魅力に惹かれて一人の青年が足繁く通うようになってしまいます。
通いつめるうち次第に支払いに困るようになった青年は、とうとう家のお金に手をつけようとしますが、父親に見つかってしまい「これを最後にキッチリ支払いを済ませてこい!」と激怒されます。
青年は父親に言われた通り最後と決めてボッコちゃんに会いに行きます。
心のうちで最後と思いながら、いつものようにボッコちゃんにあるお酒をすすめるのですが、、、
ネタバレしてしまうのでこれ以上は書けませんが、ボッコちゃんにはロボットであるということ以外にもう一つ重要な秘密が隠されており、それが絶妙な伏線となっています。
青年が最後に取った行動とボッコちゃんの秘密による見事なオチ。そこがまさに星新一ワールドの真骨頂です。気になる方はぜひ読んでみてください。
「生活維持省」
とんでもなくシュールな内容です。
国民の安寧秩序と平和な暮らしを守るための政府の省庁「生活維持省」。
その「生活維持省」の役人二人が淡々と彼らの仕事を遂行していくお話です。
“生活維持“というフレーズがなんとなくクールな印象を与えますね。
物語の前半、言い渡された仕事を行うために現場へと向かう車の中で二人が会話しています。
政府の方針によってあらゆる犯罪や交通事故、病気などは過去のものとなり、多くの人が望む理想的な社会が営まれているということがその会話を通して語られます。
ガソリンを入れ最初の仕事場に到着。そこで「生活維持省」の役人であることを名乗り仕事を遂行していくのですが、、、
この先はネタバレするのでここまでにしておきます。
とてもシュールな展開が待っているので是非読んでみてほしいです。
「マネー・エイジ」
「地獄の沙汰も金次第」という言葉がありますが、それが星新一流に描かれているのがこちらの話。
大小あらゆる事柄がお金によって何とかなってしまう社会がとてもコミカルに描かれています。
まぁ現代社会も似たり寄ったりなところはありますが、ここまでお金の力で何とかなるとある意味楽しいのかも知れません。
お金の力って偉大ですね。
「冬きたりなば」
星新一の描くSF世界ってこんな感じだなぁというのが感じられるのがこちらのお話。
とても高性能な宇宙船を設計したエヌ博士。ところがその研究のために財産を使い果たしてしまい、製造費が捻出できず困ってしまいます。
スポンサーを集い、その製品を他の恒星系まで宣伝・売込みに行くことを条件に資金を調達し、なんとか製造までこぎつけます。
完成した宇宙船にスポンサー企業の製品を沢山積み込んで飛び立った博士。よさげな惑星をみつけ着陸します。
惑星の住民に売り込みをかけとてもよい反応をもらうのですが、、、
面白味がわかる最後の瞬間、そのオチの見事さにしてやられます。
この話のスケールの大きさが分かるような人に是非とも読んで欲しいです。
まとめ
どこを切っても面白い
星新一の作品というのは金太郎飴と同じでどこを切っても美味しいんですよね。
長すぎないし、読み飽きないのもポイント高いです。
この一冊でいろんな味が楽しめるので、小説が苦手だと言う人にもぜひとも読んで欲しいです。
いろんな意味で本というものの価値観を変えてくれると思います。
最後までご覧いただきありがとうございます。
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