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『高い城の男』(P・K・ディック)|レビュー

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『高い城の男』|ディックの描くもうひとつの歴史

今回はフィリップ・K・ディックの『高い城の男』です。

ディックと言えば『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の方が有名かと思います。

恥ずかしながら本ブログのタイトルもこちらにあやかっております。

ただ、海外では本作の方がよく読まれているみたいですね。

PrimeVideoではオリジナルTVドラマとして4シーズン40話が配信されています。

自分も観ました。

原作とは違う形で描かれていますが、本作の「虚構が現実で、現実が虚構として描かれている」点はなかなか面白く再現されているなと思いました。

興味のある方はこの機会にPrime登録してみはていかがでしょう?

こんな人におススメ

  • 過去の出来事についていろいろ考えるのがすきな人
  • 歴史好きな(特に第2次世界大戦中)人
  • 枢軸国ってなんだろう?と思っている人

ディック作品は世界観が独特で、初読の方には読みづらい傾向があります。

本作は一応、歴史(改変)ものなので何となーくは読めると思います。

評価

【19ポイント】

評価ポイント
  • 登場人物が絞られているので相関関係はつかみやすい
  • 歴史改変ものなので現実世界と対比しながら読める
  • その反面ある程度史実に精通していないと楽しめない点はマイナスだが、これを機に歴史を学べる

ディック作品の読みはじめとしておススメできる一冊です。
興味がわいたら、『電気羊』や『ユービック』なども読んでみるといいかも知れません。

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『高い城の男』|基本情報

基本情報

作品名(原題)高い城の男 (The Man in the High Castle)
著者フィリップ・K・ディック(Philip Kindred Dick)
刊行年[新訳版](米国)1965年 [1984年] (1962年)
ページ数432ページ
出版社早川書房 <ハヤカワ文庫SF 568>
ジャンル歴史改変

あらすじ

第2次世界大戦でイタリア・ドイツ・大日本帝国のいわゆる枢軸国(Axis Powers)が勝利した世界を描いた歴史改変物語。

戦勝国である日本はアメリカ西海岸地区を属領化し専制支配していた。
あるとき、協調関係にあるドイツの最高指導者が急逝したことによりナチ党内の権力争いが勃発。
重大な軍事作戦の成否を握るその争いの火種は遠くアメリカにまで及び、日本も否応なく巻き込まれてしまう。
「高い城の男」が描いたとある歴史小説が人々の運命を翻弄する。

主要登場人物

主要人物
  • ロバート・チルダン :アメリカ美術工芸品商会店主。
  • フランク・フリンク :工芸職人。ユダヤ系。
  • 田上 信輔     :太平洋岸連邦第一通商団代表。
  • ジュリアナ・フリンク:フランクの妻。柔道の教師。
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『高い城の男』|推しどころ

歴史に「もし」があったら

「あの時ああしていれば・・・」、「あの時あんな事を言わなければ・・・」といったやり直したい過去は誰にでもありますよね。

“歴史”もまたそれらの選択の上に成り立っています。

そう考えると、果たしてあの時の結果が違っていたら今頃どんな世の中になっていたのだろうと想像を巡らすのは、歴史家に非ずとも興味の尽きない対象だと思います。

歴史に精通している人にはその人なりの見方があるし、自分のようにハードSFと思って期待して読んでみたものの「思ってたのと違う!」となる人にもそれなりの読み方はできます。

歴史(特にWW2末期)に詳しいとより面白いと感じるはずです。

虚構 vs 現実 まさにディックの真骨頂!

枢軸国が第2次大戦で勝利したあとの世界。

考えるとゾッとしますが、敢えてその世界を描くことでディックが表現したかった事はなにか?

物語の中で発禁本に指定されている『イナゴ身重く横たわる』は、連合国側が勝利した世界を描いた小説で、劇中でもスマッシュヒットしています。

この現実と虚構との対比、物語の世界にひそかに憧れを抱く人々のリアルな心情。

そうかと思うとその小説世界を粉々に打ち砕きたいと願う人たちも居て、知らず知らずのうちにその対立の狭間に立たされてしまっています。

この感覚こそまさにディックの多くの作品に共通するテーマでしょう。

外国人になった気持ちで読んでほしい!

自分は日本人です。

なのでこの本を読んだとき、やはり日本人の立場として受け止めました。

これはある意味仕方のないことです。

なので日本では『アンドロイドは・・』の方がよく知られているんじゃなかろうかと思います。

日本は敗戦から多くの事を学び、その逆境をバネに大きな復興を遂げました。

このことが多少なりとも日本国民の自尊心を支えているのは疑いようがありません。

翻ってこの本では、勝利した日本人がアメリカ人を下に見る様が描かれています。

この部分はきっと多くの日本人にとって共感を得られない部分じゃないかと思います。

アメリカ人やドイツ人、またはどちらにも属さない国の人はこれを読んでどう感じるのか、そういう事を心に留め置いて読むとまた新鮮な気持ちで違った感想を持てるんじゃないでしょうか。

難しいですけどね・・・

占い信じるほうですか?

この本の中で割と大きなウエイトを占めているのが”易経”と呼ばれる古代中国の占筮法。

登場人物の多くが、日常の種々雑多な選択の場面に於いてこの占いの結果を尊重します。

もちろん物語なので、占いの結果もストーリー上都合のいいように描かれてはいるのですが、そもそも”占い”という行為自体が都合よく出来ているので、この点についてもまたディックの含みがあったのだろうと推察します。

当たるも八卦当たらぬも八卦」って言いますもんね。

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まとめ

色々な意味で評価が難しいです。

そもそもこれをSFとして捉えられるかどうか?という点で自分的には微妙な判定となってしまいます。

ガチガチのSF(宇宙人とかメカとかハイテクVRとか出てくるような)を期待して読むと大きく裏切られることになります。

まぁでもパラレルワールドとして観た場合にはやはりSFというジャンルの範疇に収まるんでしょうね。

話としてつまらないのかと言うと決してそうではありません。

物語のどこ(誰)に主眼を置くかによって楽しみ方が変わると思います。

そういう点で自分にとってはあまり感情移入がし難かったのは確かで、そのために没入度・読み易さの点において若干のマイナスとなっています。

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