閲覧いただきありがとうございます。
よい生き方の模範とすべく日々、論語について勉強しています。
そのなかで、どうしても触れずにおけないのが日本資本主義の父 “渋沢栄一” 氏です。
氏は “論語” と “そろばん” という一見不釣り合いに思えるこの2つの両立こそが経済の発展、国力強化に欠かせないものだと説いています。
近代日本の資本主義経済に多大な貢献をし、多くの企業や機関などの設立・発展に尽力してきた渋沢氏。
どのように考え、どのようなビジョンを持ってこれらの偉業をなし遂げたのでしょう。
本記事では渋沢栄一『現代語訳 論語と算盤』(ちくま新書)についてレビューしています。
『現代語訳 論語と算盤』|年間100冊の本を読む管理人おススメの一冊!
最初に読むならコレ!
『論語と算盤』で検索すると多くの書籍や記事が見つかるかと思います。
その中でも、最初に読むのならこちらの現代語訳が絶対おススメです。
以降でおススメの理由を3つ挙げています。
『現代語訳 論語と算盤』おススメの3つの理由
【理由その①】現代語訳でよみやすい
原版は仮名遣いや文体が古いため、慣れていないと読みづらくページ数もかさんでしまいます。
現代語訳版は意味を損なわず、現代風の平易な表現となっていて理解がしやすいです。
【理由その②】注釈がしっかり書かれている
過去の文献や古い書籍などは、ある程度その時代背景や前提知識を持っていないと理解が進まない部分があります。
『論語と算盤』自体、幕末・明治~大正期の時代の内容について書かれたお話ですから、やはりその辺りの知識が必要となります。
本書は注釈が巻末にまとめられており、読み進めるのに必要な情報が一瞥できます。
途中でいちいち意味を調べるのって、それまでの内容を忘れたり時間かかりますよね。なのでこういう点は割とポイント高いです。
【理由その③】程よいボリューム感
理由①でも少し書きましたが、原版に比べるとページ数がグッと減っています。
これは訳者の意図するところで、本書をより多くの人に読んでもらうべく読みやすさに重点を置いて訳された結果です。
不要に思われる個所や、冗長な言い回しなどを極力削っているのでページ数もおさえられ(250頁)、サクッと読むことができます。
硬い文章だとなかなかスッと読めないですよね。
『論語と算盤』|経済観念と道徳教育
内容についても少し触れておきます。
本書は以下の10章から構成されています。
- 処世と信条
- 立志と学問
- 常識と習慣
- 仁義と富貴
- 理想と迷信
- 人格と修養
- 算盤と権利
- 実業と士道
- 教育と情誼
- 成敗と運命
前半のポイント解説
1章~2章では主として、青年期に『論語』に触れ、これを経済活動に活かし実業家として身を立てていこうと決意した経緯などが語られています。
『論語』はただ道徳的な精神を養うためだけではなく、正しく用いれば商売で立ち回るための強烈な武器となる事を実感していたようです。
続く3章~4章で常識とはどのようなものかという問いに以下のように分析し、経済活動を行う上で大事なものであると同時に慣習によって高めていけるものと定義。
また本当の経済活動は、社会のためになる道徳に基づかなければ長続きしないとしています。
中盤以降のポイント解説
5~6章では、道徳の進歩や宗教についての考え方、「文明」と「野蛮」の対比について見解を述べており、文明の発展には経済的な豊かさと力強さが必要だとしています。
他の宗教には神や仏といった絶対的な存在があり、困った時には奇蹟をおこして救ってくれるものが多いですが、論語の教えというのはその点で他とはまったく異なり、重要なのは己の人格を磨く(徳を積む)ことだとされます。
人格を磨き上げ、その結果得られた地位や豊かさがのみが本当の成功であり、そのためには論語を学ぶのが最善だと氏は考えていました。
また実業には正しい競争原理が必要なことや、欧米諸国に大きく後れをとっていた教育問題、女性の社会進出などについても指摘し、それらの問題も論語の考え方を取り入れることで解決ができるのだと主張しています。
大きな変化にもブレることのない生き方
孔子が理想としたのは徳によって国を治める徳治政治。氏はそれを経済に応用し、徳治経済の礎を築いたといえます。
幕末から明治、大正と激動のさなかにありながら決してブレることなく経済発展と資本主義の基盤を支えてきた渋沢氏の根底にあった論語の思想。
道徳と経済の融合、「論語とそろばん」についての神髄が垣間見える一冊です
ぜひとも手に取って読んでみてください。
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